親族間で不動産を売買すると?メリットや注意点を解説

親子や親族の間で不動産を売買することを親族間売買と言います。

親族間でも不動産を売買することは何も違法性はありません。

そのため、親族間で不動産を売買することはよくあります。

しかし、親族間で不動産を売買することは、通常の売買も比較して注意しなければならない点がいくつもあります。

親族間売買のメリットや注意点について詳しく解説していきます。

親族間の不動産売買とは

親族間の不動産売買とは、その名の通り親子などの親族で不動産を売買することです。

親族の範囲はどこまでなのか、なぜ親族間売買が問題になることがあるのか、詳しく解説していきます。

親族の範囲はどこまで?

「親族間売買は要注意」という時に、実は親族の範囲に明確な定義はありません。

ちなみに民法上の親族の範囲は

  • 6親等以内の血族
  • 配偶者
  • 3親等以内の姻族

となっています。

親族間売買で大きな問題になるのは「みなし贈与」が発生していないかということです。

みなし贈与とは贈与の意図が双方になくても、どちらか一方が経済的な利益を得ていることから税務署が贈与とみなすということです。

みなし贈与は親族間でなくても、友人間などでも発生する可能性がありますが、親族間では最も起こりやすいので、「親族間売買は要注意」などと言われることが多くなっています。

価格が適正であれば特段問題はない

親族間売買で大きな問題になるのが「みなし贈与」です。

例えば、評価額が2,000万円の土地を500万円で親族間で売買した場合、買った側の人間が市場価格よりも1,500万円も安い値段で土地を取得したことになります。

この場合には、みなし贈与と判断される可能性があるでしょう。

つまり、評価額2,000万円の土地を2,000万円で売買していれば「みなし贈与」と判断される可能性がないので、親族間売買でも問題はありません。

親族間売買でも売買価格が適正であれば問題なく売買することが可能です。

親族間売買の注意点

親族間売買は、売買価格が適正であれば問題ないかと言えばそれだけではありません。

親族間売買には注意すべき点がいくつもあります。

親族間売買の注意点
  • 不動産の売却価格によっては「みなし贈与」になる
  • 税務上の特例
  • 住宅ローンの審査に通りにくい

贈与の問題だけでなく、税務上の問題や住宅ローン審査などで親族間売買が問題になることがあります。

親族間売買の注意点について詳しく解説していきます。

不動産の売却価格によっては「みなし贈与」になる

親族間売買で最も問題になるケースが「みなし贈与」です。

不動産の評価額よりも著しく低い価格で売却した場合には、売り手から買い手への贈与とみなされる可能性があります。

また、評価額よりも著しく高い価格で売却した場合には、買い手から売り手への贈与とみなされます。

親族間売買においては、売却価格を双方のお財布事情などに合わせて自由に決めることができます。

しかし、この価格が市場価格よりも著しく離れていた場合には「みなし贈与」となってしまうので十分に注意する必要があります。

なお、過去の判例から「著しく低い金額」の目安とされているのが、時価の80%です。

例えば、2,000万円の土地を80%以下である1,600万円で売却した場合には、「著しく低い金額」と判断されて、みなし贈与になる可能性があるので十分に注意しましょう。

税務上の特例

親族間売買によって不動産を購入すると、次のような税務上の特例を受けることができません

売り手側の特例
  • 居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除
  • 居住用財産を売ったときの軽減税率の特例(10年超所有軽減税率の特例)
  • 特定の居住用財産の買換えの特例(買い換え特例)
  • 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
買い手側の特例
  • 住宅ローン控除(住宅ローンを利用して親族間売買をした場合)
  • 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例

通常の売買であれば、このような特例を使用することによって税金を抑えることができますが、親族間売買であれば、上記のような特例を使用することができないので税金の負担が高くなる可能性があります。

これらの点については事前に税理士などへ確認しましょう。

住宅ローンの審査に通りにくい

親族間売買で住宅を購入する際に、住宅ローンの借入を希望しても、審査に通過することが非常に難しくなります。

基本的に住宅ローンでは親族間売買の住宅購入資金を融資していないためです。

親族間売買では、買い手と売り手が口裏合わせして、住宅購入資金を住宅購入以外の別の使い道へ流用する危険性があります。

例えば、親子で3,000万円で住宅を売買することにして、実際には名義を変えただけで売買はせず、融資金を事業に使ってしまうというケースです。

住宅ローンは住宅という手放すことができないものだからこそ、低金利で融資を行っています。

他の目的にお金を使われてしまったら、返済されないリスクも高いので、流用される可能性のある親族間売買について、取扱不可と決められている住宅ローンが非常に多くなっています。

親族間売買を希望する場合には、住宅ローンを利用できるとは考えない方がよいでしょう。

一括で支払うか、親族間で分割払いの約束をして売買するしかありません。

親族間売買の5つのメリット

親族間売買には次の5つのメリットがあります。

親族間売買の5つのメリット
  • 不動産に対する安心感
  • 売り手・買い手に対する安心感
  • 引渡し時期などを柔軟にできる
  • 支払い方法も自由にできる
  • 相続税対策として有効

安心感と価格や支払い方法に関する自由度が高いという点と、相続税の対策としても活用できます。

親族間売買の5つのメリットについて詳しく見ていきましょう。

不動産に対する安心感

親族間売買で購入する物件は、親族が所有している物件ですので、内覧をすることは非常に簡単です。

また、すでに居住している家だったり泊まったこともある家である可能性も高いので、どこの誰か分からない人が所有している物件よりも安心であることは間違いありません。

中古住宅を購入する時には「後から聞いていない不具合が見つかった」ということが最も大きなリスクですが、親族間売買によって不動産を購入することで、一定の安心感の中で不動産を購入できるのはメリットです。

売り手・買い手に対する安心感

親族間売買は親族と売買することですので、お互い売り手や買い手の顔や人柄をよく知っています。

通常、不動産を購入する時には「買い手や売り手はどんな人なのだろう」と不安になる場合もあります。

しかし、親族間売買であれば信頼できる親族との取引であるため、安心できる売り手・買い手と取引をすることが可能です。

引渡し時期などを柔軟にできる

親族間売買は、お互いが柔軟に話し合いをできる間柄で、双方の都合に合わせて融通を効かせることができる関係です。

そのため、引渡し時期などをお互いの都合に合わせて柔軟に設定することが可能です。

例えば「3月には子供が結婚するから、それまで引渡しを待ってほしい」など、都合に合わせて柔軟に設定することができます。

通常の売買であれば、引渡し時期などについてある程度は買い手の都合を優先しなければなりません。

買い手によっては「タイミングよく引渡しができないのであれば、購入を見送る」という人も多いでしょう。

この点、親族間売買はお互いが都合のよいタイミングを双方で話し合った上で設定できるので、柔軟に引渡しなどのスケジュールを決めることができます。

支払い方法も自由にできる

支払い方法に関しても親族間売買は自由自在です。

他人同士や不動産会社との売買であれば、一括払いしか選択できません。

そのため、手元にまとまった資金がないのであれば住宅ローンを借りなければなりませんし、住宅ローン審査に通過できなければ住宅購入を見送らなければなりません。

しかし、親族間売買においては、支払方法は双方合意の上で自由に設定できるので、「毎月〇〇万円ずつ」というような分割払いで住宅を購入することも可能です。

相続税対策として有効

親族間売買を上手に活用することによって相続税対策にもなります。

被相続人が生存中に相続財産を減らしておくことができるので有効です。

適正な価格で買取を行えば、他の相続人の納得を得やすく、贈与にもなりません。

不動産の相続は、相続人の誰か1人だけが相続することに他の相続人が反対するケースが多いので、売却した上で現金を相続するケースが一般的です。

しかし、売却そのものに相続人の1人が反対して売却ができないなど、相続人が揉める大きな原因になります。

親族間売買によって被相続人の生存中に不動産の名義を相続人の1人に移してしまうことによって、相続が発生した後に揉める原因を解消することができます。

親族間売買の4つのデメリット

親族間売買にはメリットも多いですが、デメリットも多いので注意が必要です。

親族間売買の4つのデメリット
  • 「みなし贈与」を疑われるリスク
  • 税務上の控除が適用されない
  • 住宅ローン審査に通らない
  • 親族間ゆえにトラブルになることも

なんと言っても贈与を疑われるリスクや、税務上のデメリットなどはしっかりと頭に入れておきましょう。

親族間売買の4つのデメリットについて解説します。

「みなし贈与」を疑われるリスク

親族間売買最大のリスクが「みなし贈与」です。

市場価格の80%以下の価格で売買すると、税務署から贈与を指摘され、高額な贈与税を支払わなければならない可能性があります。

ちなみに贈与税の税率は次の通りです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

贈与税の基礎控除は110万円です。

例えば、市場価格2,000万円の土地を500万円で親族間売買した場合は、1,500万円のみなし贈与になる可能性があります。

この場合の贈与税は次の通りです。

(1,500万円-110万円)×45%-175万円=450.5万円

実に贈与税だけで450万円以上必要になります。

贈与と判断された際の金銭的なリスクは非常に大きいので、売買価格には十分に注意しなければなりません。

税務上の控除が適用されない

親族間売買の場合には、本来自宅を売却・購入した際などに適用される各種控除が適用されません。

売り手にとっては親族ではない第三者へ適正な価格へ売却した方が金銭的なメリットは大きくなるでしょう。

親族間売買は売り手にとっては金銭的なメリットは少ないと理解しておきましょう。

住宅ローン審査に通らない

住宅ローンは親族間の売買資金を基本的に融資していません。

そのため、親族から家を購入したい場合に住宅ローンを利用することは非常に難しいでしょう。

親族間売買では自己資金か分割払いによって住宅を購入する必要があります。

親族間ゆえにトラブルになることも

親族間という近い間柄だからこそトラブルになることもあります。

通常の売買のように不動産会社が間に入るわけではなく、当人同士で話し合うからこそ、価格面や修繕などについて、お互いがお互いの意見をぶつけ合ってしまい、関係性が悪化してしまうことは珍しいことではありません。

親族間という平等な関係の中に、お金の話が持ち込まれることによって関係を壊してしまうこともあります。

親族だからと言って遠慮なく言いたいことを言うのではなく、金銭的な問題については冷静に話し合うようにしましょう。

親族間売買にかかる費用とは?

親族間売買にも諸費用はかかりますし、その金額は決してバカにできるものではありません。

売り手にも買い手にも費用がかかるので、それぞれどの程度の費用が必要になるのか把握しておきましょう。

親族間売買にかかる諸費用を売り手買い手それぞれについて解説します。

売却側にかかる費用

不動産を売る側が負担しなければならない費用は次の通りです。

売却側にかかる費用
  • 収入印紙代:売買金額によって異なる。1,000万円超5,000万円以下で2万円
  • 抵当権抹消費用:登録免許税が不動産1件につき1000円+司法書士報酬1〜3万円程度
  • 住宅ローンの一括返済手数料:住宅ローンがある場合に発生。銀行ごとに異なる
  • 譲渡所得税:売却した不動産の所有期間や種類、売却益の金額によって異なる
  • 各種証明書の発行費用:住民票300円/枚、登記事項証明書480円~600円/部など

売る側は譲渡所得税が最も大きなコストになるでしょう。

親族間売買で特別控除が適用されない場合、長期譲渡所得で所得に対して15%もの税金がかかります。

購入側にかかる費用

不動産を購入する側が負担しなければならない費用は次の通りです。

購入側にかかる費用
  • 登記費用:所有権移転登記、抵当権設定登記の登録免許税と司法書士報酬
  • 印紙税:売買金額によって異なる。1,000万円超5,000万円以下で2万円
  • 不動産取得税:取得した不動産の価格(課税標準額)×税率(本則税率3%、4%)

不動産を購入する側は、親族間売買でも不動産会社を通す売買でも諸費用はそれほど変わりません。

不動産会社の仲介がいないので、仲介手数料だけは節約することが可能です。

親族間売買のために準備すべき5つのこと

メリットとデメリットが極端に多い親族間売買は事前に次のことを準備しておくことで、メリットだけを享受することができるでしょう。

親族間売買のために準備すべき5つのこと
  • 購入資金に住宅ローンは当てにしない
  • 売買契約書を作成する
  • 他の相続人とも事前に相談する
  • 専門家に手続きを依頼する
  • 税務署に説明できるようにする

親族間売買のため、事前に準備すべき5つのポイントについて解説します。

購入資金に住宅ローンは当てにしない

親族間売買では住宅ローンを借りることが非常に困難です。

そのため、購入資金について住宅ローンを当てにすることはやめましょう。

手元にお金がある場合は一括払い、売り手が納得する場合には分割払いで購入するしかありません。

「資金は銀行から借りればいい」と考えて話を進めても、親族間売買で銀行から融資が出る可能性は非常に低いので住宅ローンを考慮することはやめた方がよいでしょう。

売買契約書を作成する

親族間売買であっても売買契約書だけはしっかりと作成しましょう。

自分でインターネットなどで雛形を拾って作成しても問題ありません。

しかし、売買によって所有権移転登記を行うので、この際に司法書士に作成を依頼した方が効率的です。

売買契約書は税務署からみなし贈与を疑われた時に、「贈与ではなく売買」「いくらで購入した」ということを示す非常に重要な証拠になるものです。

「親族だから契約書なんていらない」と面倒に感じることなく、売買契約書はしっかりと作成し、保管しておきましょう。

他の相続人とも事前に相談する

他の相続人とも事前に相談した上で親族間売買を進めましょう。

他の相続人にとっては、相続できると思っていた不動産の名義が知らない所で変わってしまうことになります。

後々の大きなトラブルの原因にもなりかねないので、必ず他の相続人と相談した上で売買の手続きを進めるようにしましょう。

専門家に手続きを依頼する

親族間売買は必ず専門家へ手続きを依頼しましょう。

税理士などに「売買価格がみなし贈与と判断されないか」と相談してから手続きを進める必要があります。

また、税理士や司法書士に売買契約書を作成してもらいましょう。

最後に司法書士へ所有権移転登記を依頼することで手続きは完了です。

親族間売買は親族間だからと言って当人だけで話を進めるのではなく、必ず専門家に価格などを確認した上で適切に手続きを進めるようにしてください。

税務署に説明できるようにする

税務署には国税総合管理システム(KSK)というシステムがあり、このシステムに申告・納税の事績や各種の情報を入力することによって国民1人1人の申告・納税状況を確認しています。

税務署は毎月法務局より登記情報を得ており、登記情報もKSKに取り込んでいます。

つまり、親族間売買を行い不動産の所有権を移転すると、税務署がそれに気づく仕組みとなっており、ここから「みなし贈与ではないか」と目を向けます。

そのため、親族間売買によって不動産の所有権を移転すると、ほぼ確実に「なぜ名義を変えたのですか?」という問い合わせが入ります。

この際に、売買契約書などを持参して、「適正価格で親族間で売買した」と説明できるようにしておきましょう。

ここでしっかりと説明できないと、みなし贈与が疑われる可能性が非常に高くなるので十分に注意してください。

まとめ

親族間売買は親族間で不動産を売却・購入することです。

価格は当人同士で自由に設定することができますが、市場価格の80%以下の安い価格で売買してしまうと、贈与が疑われる可能性が高いので売買価格には十分に注意する必要があります。

また、親族間売買では住宅ローンを借りることもできないので注意しましょう。

親族間売買でも売買契約書をしっかりと作成し、売買価格について問題ないかどうかを税理士などに確認する必要があります。

事前に専門家などにしっかりと確認した上で、親族間の売買手続きを進めるようにしてください。