任意売却とは?売却の流れやメリット・デメリットを解説

住宅ローンの返済が困難になった時や、住宅ローンが残った自宅を手放したい時には「任意売却」という方法で自宅を手放すことができます。

任意売却は自宅と住宅ローンを同時に手放すことができる方法ですので、将来的に万が一住宅ローンの返済が困難になった場合や、夫婦が離婚に至ってしまった場合などに備えて任意売却の特徴やメリット・デメリットについて理解しておいた方がよいでしょう。

この記事では、任意売却の特徴や売却の流れ、メリット・デメリットについて詳しく解説していきます。

現在住宅ローンの返済に悩んでいる方はぜひご覧ください。

任意売却とは

任意売却とは、住宅ローンが残った状態の自宅を売却し、売却代金で住宅ローンを返済する方法です。

主に住宅ローンの返済が困難になった時に利用される方法ですが、競売との違いも含めて詳しく解説していきます。

住宅ローンが残った状態で自宅を売却する方法

任意売却は住宅ローンが残った状態の住宅を売却し、売った代金で住宅ローンを返済することです。

任意売却を行うことに法的な許可などは必要ありません。

自宅の所有者が売り手を探し、金融機関の了解を得て、売買と同時に住宅ローンを返済し抵当権を解除することによって、住宅ローンの返済と住宅の売却を同時に行います。

住宅ローンの借主は住宅ローンの返済から解放され、金融機関は住宅ローンを回収できるので、双方にメリットがある方法です。

住宅ローンの返済ができなくなった多くの人が実際に任意売却を利用しています。

任意売却と競売の違い

競売とは住宅ローンの返済が長期間焦げ付いた時に、金融機関や保証会社などの債権者が裁判所へ競売の申し立てを行い、裁判所が債権者の申し立てが正当と立証された場合に競売の許可を出します。

競売の許可が出ると自宅は強制的に差し押さえられてしまいます。

また、売却価格も任意売却の60%程度になってしまいます。

裁判所が強制的に売却するので、売却のタイミングや価格などは債務者の意図とは無関係に売却手続が進みます。

競売は任意売却よりも債務者にとって不利な手続きです。

通常、長期間住宅ローンを延滞すると競売に至ってしまうので、競売に至る前に早めに任意売却の手続きを進めるようにしましょう。

任意売却が利用される2つのケース

任意売却が利用されるのは主に次の2つのケースです。

  • 住宅ローンの返済遅延
  • 離婚

住宅ローンの返済が苦しくなり、これ以上住宅ローンを返済することができない場合や、離婚してどちらも今の家に住み続けたくないというケースです。

任意売却が利用される2つのケースについて詳しく解説していきます。

住宅ローンの返済遅延

任意売却は主に住宅ローンの返済が困難になった人が利用する方法です。

住宅ローンを利用して購入した自宅を任意売却によって売却することで、売却資金を住宅ローン返済に充てることができます。

これによって、自己破産などをすることなく住宅ローンを返済することができます。

離婚

離婚でも任意売却は利用されることがあります。

夫婦で居住していた住宅は離婚によって不要になるケースが少なくありません。

この場合、任意売却によって処分することで、不要な住宅を売却して住宅ローンを返済することができます。

また、共有名義の住宅や住宅ローンは離婚後の処分に困ります。

離婚後も共有で所有することや返済することは実質的に不可能だからです。

この場合も、任意売却によって自宅を処分することで、離婚後に共有名義の自宅や住宅ローンを精算することができます。

任意売却のメリット

任意売却は競売と比較して主に次の5つのメリットがあります。

任意売却のメリット
  • プライバシーを守れる
  • 競売よりも高く売却できる
  • 引渡しなどの諸条件の要望が通りやすい
  • リースバックによって売却後も住み続けられる
  • 仲介手数料を売却額から控除できる

強制的に行われる競売よりも売主の自由度が高く、高い価格で売却できる可能性があるのが大きな特徴です。

任意売却の5つのメリットについて詳しく解説していきます。

プライバシーを守れる

任意売却は近隣の人に自宅を売りに出していることを知られることなく売却できます。

競売であれば、競売物件として情報が公開されるので、近隣住民はおろか、第三者まで情報を知られてしまう可能性があります。

任意売却は通常の不動産の売買と同じように売却できるので、売却する事実は知られにくく、少なくとも住宅ローンを延滞しているから売りに出しているということは秘密にすることができます。

競売よりも高く売却できる

任意売却の売却手法は通常の不動産の売却と同じような手法で行われるのが一般的です。

そのため、競売よりも高い値段で売却できる可能性が高くなります。

競売の場合には、そもそもの評価額が通常の評価額より2割〜3割程度低い値段で評価され、さらに売買基準価格は評価額の8割です。

例えば市場価格1,000万円の不動産は競売では700万円で評価され、売買基準価格は560万円になります。

市場価格の半額程度でしか評価されないので、競売での売価は市場価格よりも圧倒的に低くなります。

任意売却であれば1,000万円の物件は1,000万円程度で売却できる可能性が高くなるので、できる限り高い価格で売却するためにも、銀行や保証会社が競売の申し立てをする前に任意売却を進めるべきでしょう。

引渡しなどの諸条件の要望が通りやすい

任意売却は通常の不動産の売買と同じですので、価格や引渡しの時期などの諸条件について双方の希望を話し合いで叶えることができる可能性があります。

例えば、子供の学校の都合で「引き渡しを4月にしてほしい」と希望すれば、買い手の同意を得ることで希望を叶えることが可能です。

他方、競売は債権者が裁判所へ申し立てを行い、裁判所が許可をすれば債務者の意図とは無関係に開始され、競売代金が振り込まれると建物を明け渡さなければなりません。

競売では全く債務者の意図が反映しないことと比較して、任意売却は債務者側の条件を出しやすいのは大きなメリットです。

リースバックによって売却後も住み続けられる

任意売却ではリースバックと併用することもできます。

リースバックとは、不動産を不動産会社に売却したあと、不動産会社へ家賃を支払うことで引き続き自宅に住み続ける方法です。

また、リースバックは数年後に買い戻すこともできるので、「どうしても一時的に生活が苦しくて住宅ローンを払えない」という時に自宅を売却し、数年後に経済的な余裕が生まれた後に自宅を再び取得することもできます。

競売であれば問答無用で自宅を出て行かなければならず、買い戻しも困難であることと比較すると、リースバックを活用すれば住み慣れて思い出の詰まった自宅を手放す必要がないのはメリットです。

仲介手数料を売却額から控除できる

任意売却は不動産会社を通じて売却する手続きです。

そのため、売却する場合には不動産会社に対して仲介手数料を支払わなければなりません。

通常、仲介手数料は売却額から控除することができないので、数十万円〜100万円以上の仲介手数料は別途キャッシュで用意する必要があります。

しかし、任意売却で不動産を売却する場合に限っては仲介手数料を売却額から控除することが認められています

仲介手数料は前払いになるので、手元に現金がないと不動産の売却は難しいですが、任意売却に限っては手元に現金がなくても不動産を売却することができます。

任意売却のデメリット

任意売却は確実に売却できる競売と比較して次の2つの点はデメリットです。

任意売却のデメリット
  • 売却できないことがある
  • 業者によって対応が異なる

任意売却とは、簡単に言えば、住宅ローン付きの住宅を普通の市場で売却するだけですので、売却できないこともあれば業者によって成果も異なります。

任意売却の2つのデメリットについて詳しく解説していきます。

売却できないことがある

任意売却は、基本的には通常の不動産の売却と同じ手続きで買い手を探します。

そのため、不動産の価格や立地などによってはどれだけ長い時間をかけて不動産を販売したとしても不動産を売却できないことがあります。

また、売却までには一定の時間がかかるので、買い手が見つかる前に金融機関が競売の申し立てを行う可能性もあります。

任意売却では、必ずしも必要なタイミングで希望額通りに売却できるわけではないという点が1つ目のデメリットです。

業者によって対応が異なる

任意売却は通常の不動産と同じように不動産会社が仲介して買い手を見つける販売方法ですので、業者によって売れるのか売れないのかが大きく異なります。

業者によっては豊富なコネクションやオリジナルの販売方法で比較的簡単に買い手を見つけてくれることがある一方、中古物件販売や任意売却にノウハウがない不動産会社に仲介を依頼してしまうと、いつまで待っても不動産が売れないケースや、住宅ローン残高よりも著しく低い金額でしか住宅を売却できないこともあります。

どの業者へ相談するのかによって売却のスピードや売却額は大きく異なるので、この点は注意して業者を選ぶようにしましょう。

任意売却の流れ

任意売却は基本的に次のような流れで行われます。

任意売却の流れ
  1. 不動産会社へ相談する
  2. 住宅ローンの残高を明確にする
  3. 不動産会社の査定を受ける
  4. 査定結果を確認し媒介契約
  5. 自宅の売り出し
  6. 買い手が見つかったら金融機関へ相談
  7. 不動産売買契約
  8. 住宅ローン返済・引渡し

基本的には普通に家を売る流れと変わりません。

任意売却によって自宅を売却するまでの一連の流れについて詳しく見ていきましょう。

不動産会社へ相談する

任意売却を行う際にはまずは不動産会社へ相談しましょう。

任意売却は住宅ローンを借りている銀行の許可を得なければ不可能な手続きですので、「先に金融機関へ相談した方がよい」と考えている人も多いでしょう。

しかし、先に金融機関へ相談すると「住宅ローン残高以上でないと認めない」などと言われ、金融機関に主導権を握られてしまうこともあります。

そのため、先に不動産会社と相談し、金融機関に対しては買い手が見つかった後に「〇〇万円で買い手が見つかったから任意売却に応じて欲しい」と交渉した方が、任意売却の交渉は成功する可能性が高いでしょう。

まずは任意売却を得意としている不動産会社へ相談しましょう。

住宅ローンの残高を明確にする

次に、住宅ローンの残高を明確にする必要があります。

住宅ローンの残高が分からないと「最低でもいくら以上で売却する」という戦略を立てることができないためです。

住宅ローンの残高は金融機関の窓口に行って「残高証明書を発行してほしい」と依頼することができますが、金融機関から送られてくる返済予定表でも正確に確認することができます。

不動産会社に任意売却の相談をする際には「〇〇万円の住宅ローンが残っている」と残高を明確に説明できるようにしておきましょう。

不動産会社の査定を受ける

次に不動産会社の査定を受けます。

なお、不動産会社によって査定額に違いがあり、早く売りたい不動産会社は相場よりも安い価格になり、高い手数料を欲している不動産会社は査定額を相場よりも高くする傾向があります。

適正に売却するためには査定額は高くもなく安くもないのが最も重要です。

そのため、ご自身でも周辺の同規模物件がいくらで売りに出ているかリサーチして、相場を理解しておきましょう。

査定結果を確認し媒介契約

不動産会社が出した査定結果を確認し、査定価格が納得できるものであれば媒介契約を締結しましょう。

他の不動産会社にも買い手を探してもらい不動産会社同士を競争させたいのであれば一般媒介契約、信頼できる1社に本気で買い手を探してほしいのであれば専任媒介契約というように、どんな不動産会社と契約するのかによって媒介契約の形を検討しましょう。

なお、任意売却の場合、時間をかけてゆっくりと買い手を探すことが難しいので多くの場合でより真剣に買い手を探してもらうことができる専任媒介契約を締結するのが一般的です。

自宅の売り出し

媒介契約を締結したら自宅を売りに出します。

自宅の持ち主が売出中に注意しなければならないことは内覧対応です。

購入希望者は自宅購入前に自宅内部の状態を確認に来るので、この際に綺麗な状態の自宅を見せる必要があります。

汚れていたり散らかっていると、実態よりも自宅がチープに見えるので希望価格では売れなくなってしまいます。

また、買い手が購入の意思を示すと価格交渉になります。

通常、売出価格で購入してくれる人はほとんどいません。

そのため、買い手の値引きにいくらまで応じるのかというラインをあらかじめ決めておきましょう。

また、値下げは当然に行われるものだという前提のもと、売却希望価格よりも少し高い値段を売出価格として設定しておくのが無難です。

買い手が見つかったら金融機関へ相談

買い手が見つかったところで金融機関へ任意売却の話をします。

任意売却の後に債務が残るケースでは、金融機関の対応は次のうちいずれかになります。

  • 残債を無担保で返済する
  • 保証会社へ代位弁済し、保証会社に対して残債を返済していく
  • 残債を免除または減額する

そもそも延滞が多い住宅ローンの任意売却について、金融機関がNoということはあまり考えられません。

さらに買い手と売買価格も決まっているのであればなおさらです。

交渉を有利に進めるために、買い手が見つかってから金融機関へ任意売却の相談をするようにしてください。

不動産売買契約・住宅ローン返済・引渡し

金融機関の了承が得られたら、不動産売買契約を買い手と締結します。

買い手から代金が振り込まれたら、その代金をすぐに銀行へ送金し、返済します。

住宅ローンの返済が完了すると、銀行から解除証書が手交されるので、この書類を司法書士に渡すことで抵当権の設定を解除することができ、担保が外れ、自宅を売却することができるようになります。

住宅ローンを完済し、司法書士に抵当権解除と所有権の移転の必要書類を渡せば売買手続きは全て完了です。

買い手に自宅の鍵を渡して引渡しましょう。

任意売却後も借金が残るケースはどうなる?

任意売却によって自宅を売却したとしても多くの場合で住宅ローンの残高が残ってしまいます。

これを残債と言いますが、残債は次の3つのいずれかの方法で任意売却後も返済していかなければなりません。

  • 金融機関へ分割で返済する
  • 話し合った金額を返済する
  • 債権回収会社へ返済する

任意売却後の残債の扱いについて詳しく見ていきましょう。

金融機関へ分割で返済する

残債に関しては無担保ローンとして借り換え、この無担保ローンを金融機関に対して分割で返済していく方法です。

あまりにも多くの金額が残債として残った場合には金融機関が応じてくれない可能性もありますが、100万円〜200万円程度であれば無担保での分割返済に応じてくれる可能性があります。

話し合った金額を返済する

任意売却の相談をすると、まず金融機関との話し合いが行われます。

ここで、現在の収入状況や資産状況から返済が難しいと判断された場合には、残債を減額した上で返済可能な金額だけを返済することが一般的です。

金融機関も、どうしてもお金がない人に対して、「何がなんでも返済せよ」とは一般的に言わないので、返済できる程度の金額に減額した上で返済をさせて、そこで完済扱いとします。

債権回収会社へ返済する

保証会社付きの住宅ローンは、任意売却が行われた時点で保証会社へ代位弁済請求を行い、保証会社から残債を回収して終了です。

その後、債務者は保証会社と話し合いを行い、話し合いによって決定した金額を保証会社へ返済していきます。

また、金融機関によっては任意売却後の残債を債権回収会社へ売却するケースもあります。

この場合には、債権回収会社と話し合いを行い残債を返済していきますが、そもそも金融機関は残債の数十分の一の価格で債権回収会社へ残債を売却しているので、債権回収会社に返済しなければならない金額はごくわずかになる場合がほとんどです。

まとめ

任意売却とは住宅ローンが残っている住宅を不動産会社へ売却し、住宅を売却した代金で住宅ローンを返済する方法です。

任意売却は自宅を失うものの、住宅ローンからも解放することができます。

また、離婚によって婚姻中の住宅と住宅ローンが不要という場合にも任意売却によって売却することで、住宅と住宅ローンを精算することが可能です。

競売と比較して任意売却の方が売却価格が高くなりますし、引渡しのタイミングなども自由に決めることができます。

住宅ローンの返済が不可能になった時、あまりにも長期間延滞すると金融機関から競売の申し立てが行われてしまうので、競売になってしまう前に不動産会社と相談して任意売却を進めるようにしてください。