中古マンションを購入する際には「あと何年住めるのか」ということに注目することは非常に重要です。
頑丈そうに見えるマンションにも寿命があり、場合によってはせっかく中古マンションを購入したのにすぐに寿命になってしまうことも少なくありません。
また、現在マンションを所有している方は、マンションの寿命が到来する前に売却を検討することも1つの有効な方法だと言えるでしょう。
マンションの寿命と、寿命が到来したマンションはどのようになるのか、詳しく解説していきます。
マンションの耐用年数は47年|耐用年数と寿命は異なる

マンションの耐用年数は47年と国税庁が定めてます。
しかしこれは減価償却費を計算する際の耐用年数の話で、必ずしもマンションは築47年で居住できなくなってしまうわけではありません。
むしろ、ほとんどのマンションが47年を過ぎても住み続けることが可能です。
マンションの法定耐用年数と実際のマンションの寿命について解説していきます。
国税庁が定めている耐用年数は47年
国税庁は建物ごとの耐用年数を次のように定めています。
建物の構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
木造・合成樹脂造 | 22年 |
木骨モルタル造 | 20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 47年 |
れんが造・石造・ブロック造 | 38年 |
マンションは基本的に鉄筋コンクリートで作られているので、マンションの耐用年数は47年です。
ただし、これは会計処理を行う際の減価償却費の計算の際に使用する耐用年数になります。
例えば、企業が鉄筋コンクリート造のマンションを所有している場合、マンションの価値を47年かけて費用化して減価します。
例えば、新築で9,400万円のマンションを購入した場合、9,400万円÷47年=200万円なので、毎年200万円ずつ減価償却費として費用計上しながらマンションの価値を減価させ、47年後にはマンションの価値がゼロになります。
マンション購入を税金対策として使用したい場合には、できる限り新しいマンションを購入した方が減価償却費を計上できる期間も長いので、税金対策としての効果を発揮します。
他方、築年数が経過したマンションを購入すると、減価償却費として計上できる期間が短いので税金対策として活用することはできません。
耐用年数が過ぎても居住できる
上記の耐用年数はあくまでも減価償却費を計算する際の耐用年数です。
実際には47年を経過してもマンションに居住し続けることは可能で、法定耐用年数はあくまでも減価償却費を計算するために用いられるものだと理解しておきましょう。
実際のマンションの寿命はコンクリートの質やメンテナンスの状態などによって大きく異なります。
住宅性能表示で建物の状態が分かる
マンションの状態がどの程度なのかということは住宅性能表示を確認すればわかります。
住宅性能表示とは、マンションがどの程度の耐用年数があるのかということを専門的な知見がなくても分かるように表示する仕組みです。
大手のディベロッパーが建築したマンションであれば、ほぼ必ず表示されています。
住宅性能表示の中で確認しておきたいポイントが、「劣化対策等級」という指標です。
劣化対策等級とは、どのくらいの耐用年数を期待できるのかということを1〜3等級の数字で表示したもので、具体的には等級ごとに次のような耐用年数が期待できます。
等級 | 耐用年数 |
---|---|
1等級 | 建築基準法に定められた対策がなされている(最低基準) |
2等級 | おおむね2世代(50~60年) |
3等級 | おおむね3世代(75~90年) |
3等級のマンションを購入すれば、最長90年程度の寿命があることが分かります。
中古マンションを購入する際には住宅性能表示を確認しましょう。
平均的には68年で取り壊される
国土交通省によると、マンションは平均68年で取り壊されています。
その多くが1981年に始まった「新耐震基準」が始まる前に建てられたマンションで、取り壊された建物のうち、取り壊し後に建て替えを行ったマンションは平均33年で取り壊されています。
つまり、「新耐震基準」を最初から満たしている1981年以降に建てられたマンションであれば68年よりも長い寿命を期待できるでしょう。
最長150年のマンションも存在する?
マンションの寿命は最長150年だと国土交通省は発表しています。
国土交通省の「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」というレポートによると、コンクリート造の建物の寿命は120年で、リフォームなどを行うことによって、最長で150年まで居住を続けることができるそうです。
そもそもコンクリート造の建物の寿命は長い上に、メンテナンスと改修を定期的に行い、しっかりと手をかければ理論上は150年も住み続けることが可能です。
しかし、実際には築50年程度で取り壊しになっている建物も存在するのは事実です。
なぜ、同じコンクリート造であるにも関わらず、建物によって耐用年数がそこまで大きく異なるのでしょうか?
実際に建物は建築されてから何年持つ?

実際のところ、建物は建築されてからどの程度もつのでしょうか?
財務省が公開している2011年の早稲田大学の研究では木造一戸建ては44年、鉄筋コンクリート造は68年とされています。
それぞれの耐用年数について具体的に解説していきます。
戸建て住宅の場合
1997年の調査では、木造一戸建ての平均寿命は約44年とされています。
また、2005年に行った調査では木造一戸建ての平均寿命は約54年という結果になっています。
最近になって建物の建築技術が高くなり、1997年と2005年の調査では、木造一戸建ての平均寿命は10年も伸びていることが分かります。
寿命が短いと思われがちな木造建築ですが、今後はさらに寿命が伸びていく可能性があるでしょう。
マンションの場合
一方、マンションの場合は1997年の調査での平均寿命は44年、2007年の調査では約46年と、木造よりも短い結果となりました。
これは、1981年のマンションの新耐震基準によってマンションの建て替えが盛んに進んだことが原因だと考えられます。
つまり、実際にはまだ居住できるマンションであっても、新耐震基準を満たすために取り壊してから建て替えたりしたために調査結果で平均寿命が木造と変わらないものになってしまったと考えられます。
実際にこの調査でもコンクリート造の寿命は68年程度で、メンテナンスさえしっかりすれば100年以上もつとされています。
マンションの寿命に影響する4つのファクター

そもそもマンションの寿命は建物によって異なります。
50年程度で居住することができなくなるマンションもあれば、100年以上安心して居住を続けることができる建物もあります。
それは、マンションの寿命が次の4つの要素によって異なるためです。
- 耐震強度
- メンテナンス
- コンクリートの質
- 立地
マンションの寿命を決定する4つの要素について詳しくご紹介していきます。
耐震強度
1981年よりも前の「旧耐震基準」で作られたマンションの多くが、現在の「新耐震基準」を満たしていません。
旧耐震基準では震度5程度の地震でも建物が崩壊しない基準が定められていました。
しかし、新耐震基準では震度6強から7程度の大規模な地震でも建物が倒壊しない基準となっています。
旧耐震基準で建築された1981年以前の建物は、築年数が浅くても取り壊しをせざるを得ません。
そのため、新耐震基準を満たした1981年よりも後に建築されたマンションを購入するようにしましょう。
メンテナンス
最近のマンションは、建築時に長期修繕計画が策定されているので定期的に修繕工事を行っています。
しかし、古いマンションの中には長期修繕計画が存在せずに計画的な修繕を行なっていない建物も多数存在します。
このようなマンションは、不具合が見つかってから修繕工事を行うようなケースが多く、結果的に建物の劣化が進んでしまうことがあります。
特に高度経済成長期に造られたマンションは配管に問題があり、築50年程度で取り壊さざるを得ないケースが少なくありません。
配管は30年程度で寿命を迎えるので交換が必要です。
しかし、古いマンションでは配管がコンクリートの中に埋め込まれて造られているので、配管が古くなると建物ごと壊さざるを得ません。
中古マンションを購入する際には、長期修繕計画が策定されているか、配管がどうなっているのかという点もしっかりと確認しましょう。
コンクリートの質
同じ鉄筋コンクリート造のマンションでも、コンクリートの質によって強度は全く異なります。
マンションが大量に建築された1970年代の建物は、質の悪いコンクリートが使われていることが多いと言われています。
このような建物は雨漏りが相次ぎ、劣化が早まります。
また、給排水管はメッキ銅管は錆びやすいので劣化が早まります。
それよりも塩化ビニール管の方が劣化に強いので、コンクリートの質だけでなく配管の材質も確認するとよいでしょう。
立地
マンションが建築されている場所によってもマンションの寿命は異なります。
例えば日当たりが悪ければ、建物にカビが生えたりしやすくなるので建物は劣化しやすくなります。
また、海岸沿いなどではカビに加えて、建物の鉄が錆びる塩害などによって劣化します。
さらに、地盤の弱い場所であればマンションが傾く可能性もあります。
適度に日当たりがよく地盤の強い場所のマンションの方が長い寿命を期待することができるでしょう。
寿命を迎えたマンションの行方とは?

寿命を迎えたマンションはどのようになるのでしょうか?
建物によって異なるものの、基本的には次の3ついずれかの方法で処理されることになります。
- 居住者の負担で立て替える
- 売却する
- 解体する
寿命を迎えたマンションがどのように処理されるのか、詳しく解説していきます。
居住者の負担で立て替える
寿命を迎えたマンションを居住者でお金を出し合って建て替えるという方法があります。
ただしこの方法は実現させるためのハードルが非常に高いと言えるでしょう。
建て替えには次の2つの問題点をクリアしなければならないためです。
- 居住者の5分の4以上の同意が必要
- 建て替えには数千万円の高額な費用がかかる
建て替えが必要なほどの建物ですので、新築からは数十年経過しています。
そのため、居住者の中には定年退職を迎えて年金生活になっている人も多くいます。
そのような人は「高額な費用をかけてまで建て替えたくない」と考えているケースが多いので、居住者負担の建て替えは進まないのが実情です。
居住者負担なしで建て替えられる場合も
最近では居住者負担なしで建て替えるという方法も行われています。
この場合、マンションの建ぺい率と容積率を上げて以前よりも大きなマンションを建築します。
増えた戸数分を売却することによって、売却益から居住者の負担を0円とすることも可能です。
場合によっては建築中の引越し費用も賄えてしまうケースもあり、マンションの建て替え方法としてはこの方法が最も現実的な方法だと言えるでしょう。
売却する
ディベロッパーに売却して、売却代金を居住者がそれぞれ受け取って新居を購入する費用に充てるという方法もあります。
この方法は建物を買い取ったディベロッパーがマンションを解体して、新しいマンションを建築して分譲します。
そのため、買取代金には解体費用などが控除されるので、場合によってはごく僅かな売却代金しか手元に入ってこないことも珍しくありません。
この方法は居住者の賛同が必要になり、売却代金では新居を購入できるほどにはならないため、反対する人が多く、なかなか進まない方法だと言えるでしょう。
解体する
マンション全ての居住者に引っ越しをしてもらい、その後建物を解体して更地にして売却する方法です。
やはりディベロッパーに売却するのと同様に解体費用に高額なお金がかかるので、住民の元に多くの金額が配分されることは期待できません。
住民の負担が大きいので、実現することはあまりない方法です。
このように、住民負担0円で建て替えることができない限りは、古いマンションを処理する現実的な方法はほとんどないのが現実です。
住民の多くが高齢になっている場合は特に、修繕したり建て替えたりしてより良い環境にしようというインセンティブは低く「少々不具合があっても我慢して住み続けよう」と考える人が多くなります。
そのため、劣化した建物の修繕や建て替えは遅々として進まずに、危険度だけが増していくというのは大きな社会問題となっています。
長く住めるマンションを選ぶ3つのポイント

中古マンションを選ぶ時には当然ながら少しでも長く居住することができる建物を選ぶべきです。
では、私たちが中古マンションを選ぶ時には、どのようなマンションが長く住み続けることができるマンションなのでしょうか?
次の3つのポイントを満たしているマンションを選ぶのがよいでしょう。
- 1981年以降に建築されたマンション
- メンテナンスがしっかりしているマンション
- 修繕積立金が不足していないマンション
長く住めるマンションを選ぶための3つのポイントについて詳しく解説していきます。
1981年以降に建築されたマンション
1981年以降に建築されたマンションは新耐震基準で作られています。
新耐震基準は震度6強から震度7の地震にまで耐え得る作りになっているので、強度の面で非常に安心です。
旧耐震基準のマンションは強度の面で不安があるばかりでなく、耐震診断を受けて耐震補強工事を施工しようと思えば多額のコストがかかります。
購入時の価格は安くても、結局高くついてしまうことがあるので、最初から新耐震基準を満たした1981年以降に建築されたマンションを選んだ方が安心です。
また、住宅性能表示で等級3のマンションを選ぶことで、長く住み続けることができます。
メンテナンスがしっかりしているマンション
メンテナンスがしっかりとしているマンションを選びましょう。
- 長期修繕計画が策定されている
- 共有部分の駐車場やエントランスの整備が行き届いている
- 管理人が常駐している
これらのポイントを満たしているマンションはメンテナンスもしっかりしている可能性が高いので、劣化の速度が緩やかです。
購入後も長く住み続けられる可能性が高いので、購入時にはメンテナンスが行き届いているかどうかも確認するとよいでしょう。
修繕積立金が不足していないマンション
修繕積立金が不足していないマンションを選びましょう。
修繕積立金が不足していると、当初予定されていた修繕を行うことができない可能性が高いので、マンションの劣化が早まってしまいます。
不足分を他の住民から徴収することについても住民の同意を得ることが困難です。
そのため、一度修繕積立金の不足が発生してしまったマンションが当初の計画通りに修繕を行っていくことは非常に難しいと考えた方がよいでしょう。
修繕積立金の過不足については公開されている情報ではありません。
そのため、購入前に必ず仲介している不動産会社へ確認するようにしてください。
まとめ
マンションの寿命は50年〜70年程度です。
ただし建築年や立地やメンテナンス状況によっても異なります。
寿命を迎えたマンションは、建ぺい率と容積率を上げて居住者負担0円で建て替えることができない限りは処分することが非常に困難です。
そのため、マンションの建て替えや解体などの話が少しでも出たら早期に売却してしまった方が得策です。
目に見えて分かる不具合が出てからではマンションを売却することは困難です。
さらに、建て替えの話が出てきた時点で、建物は相当劣化している可能性が高いのでそのまま住み続けることには危険も伴います。
少しでも高い価格で売却できるうちに売却を検討すべきでしょう。
また、中古住宅購入の際には次の3つのポイントをしっかりと抑え、少しでも長く住み続けることができる優良な物件に居住しましょう。
- 1981年以降に建築されたマンション
- メンテナンスがしっかりしているマンション
- 修繕積立金が不足していないマンション