不動産を売却するためには非常に数多くの書類を用意する必要があります。
必要書類の中には、大事に仕舞い込んでどこにあるか分からない書類もあるでしょう。
「不動産を売却したい」という時に急に慌てることがないよう、必要な書類を確認し、少しずつ揃えていきましょう。
不動産を売却する際、住宅ローンを借りる際、不動産を引き渡す際に必要になる書類をそれぞれご紹介していきます。
不動産の売却時に必要な書類
不動産を売却する際に、媒介契約から引き渡しまでの間に必要になる書類は次の通りです。
書類 | 必要なタイミング | 必須 |
土地・建物登記済証(権利証)または登記識別情報 | 媒介契約時・売買契約時・引き渡し時 | 必須 |
実印 | 売買契約時・引き渡し時 | 必須 |
印鑑証明書 | 売買契約時・引き渡し時 | 必須 |
固定資産税・都市計画税納税通知書 | 販売中 | 必須 |
パンフレット・管理規約・管理組合総会議事録など | 媒介契約時 | あれば |
建築確認済証・検査済証 | 媒介契約時 | 必須 |
測量図・建物図面・建築協定書 | 媒介契約時 | 必須 |
物件状況等報告書 | 販売中 | 必須 |
設備表 | 媒介契約時 | あれば |
収入印紙 | 売買契約時 | あれば |
本人確認書類 | 媒介契約時・売買契約時・引き渡し時 | 必須 |
仲介手数料 | 売買契約時 | 必須(半分) |
それぞれ、具体的にどのような書類を指し、どんな目的で使用するのか詳しく見ていきましょう。
土地・建物登記済証(権利証)または登記識別情報
いわゆる権利証と言われる書類です。
所有権を取得した登記が完了すると、法務局から発行されます。
住宅の売買の際には、売却を依頼する人が間違いなく当該不動産の所有者だということを証明するために必要です。
また、不動産の買い手が見つかると、売買と同時に買い手へ所有権を移転する登記を行いますが、この際にも権利証が必要になります。
司法書士へ権利証を渡して、所有権移転登記の手続きを代行してもらいます。
実印
不動産の引き渡しの時に、所有権移転登記の際の委任状などに実印を押印します。
また、売買契約時には契約書に押印する必要があり、押印は認印でも問題はありませんが、契約の信憑性を高めるために実印を使用した方が良いでしょう。
そのため、買い手が決まったら実印を用意しておきましょう。
印鑑証明書
印鑑証明書は基本的には実印とセットで使用します。
売買が成立し、所有権の移転登記を行う際には委任状に実印を押印した上で印鑑証明書を司法書士へ渡します。
なお、印鑑証明書は市区町村役場で300円程度で取得することができます。
こちらも買い手が決まったら用意しましょう。
固定資産税・都市計画税納税通知書
固定資産税の納税通知書には、不動産の固定資産評価額が記載されています。
ここから売買価格を算出することができるので、固定資産税の納税通知書が査定段階であれば便利です。
ただし、この段階では必ずしも必要ではありません。
必ず必要になるのは販売時です。
不動産を売買する際には、固定資産税を不動産を所有した月数に応じて按分します。
例えば固定資産税が12万円で、6月1日に不動産を引き渡した場合、売主は6〜12月分の固定資産税について払いすぎていることになります。
この場合、7ヶ月分の固定資産税7万円を買主から売主へ支払うことによって精算します。
固定資産税の納税通知書がないと、固定資産税の税額が確定しません。
そのため、不動産を販売する段階には用意しておきましょう。
パンフレット・管理規約・管理組合総会議事録など
不動産の購入時のパンフレットはその建物の性能や特徴などがしっかりと記載されているので、価格を査定する際に活用されます。
パンフレットがあれば査定が有利になることがあるので、手元に残っていたら査定時に提出しましょう。
また、マンションの管理規約などは共有部の使い方や居住のルールなどが定められており、購入者がこの管理規約などから購入を判断する重要な材料です。
販売中には必ず必要になりますが、手元にない場合はマンションの管理会社から仲介会社が取り寄せてくれるので、売り手が必ずしも用意する必要はありません。
建築確認済証・検査済証
建築確認通知書は建物を建築する前に、当該建物が法律が定める建築のルールに合致していることを証明する書類です。
自宅を売却する際にも、自宅が法律遵守の建物であることを証明するために必要になります。
万が一手元にない場合には再発行することはできませんが、役所に申請することによって「建築計画概要書」や「建築確認台帳記載事項証明書」を有料で発行することができ、これを提出することで、建築確認済証の代わりとすることが可能です。
また、その場合は仲介の不動産会社が役所に行って取得してくれるケースがほとんどなので、必ずしも売り手が用意しなければならないものではありません。
測量図・建物図面・建築協定書
隣地との境界線や建物の図面を明確にする書類です。
隣地とのトラブルを未然に防ぐため、媒介契約から引き渡しまでの間に必要になります。
手元に建物図面や地積測量図がない場合には、法務局に保管されているので、法務局でお金を支払って取得することができます。
ただし、先祖代々引き継いできた土地などでは、測量図が作成されていないことが少なくありません。
このままでは売買することができないので測量を行う必要がありますが、この場合には数ヶ月程度の時間がかかってしまいます。
物件状況等報告書
建物や土地の状況を詳細に記した書類です。
一般的に媒介契約時に建物や土地の詳細を申告して作成しますが、売り出し時など変化があった場合には適宜変更します。
なお、書類の形は業者によって異なるので、必ずしも必要になる書類ではありません。
設備表
物件を引き渡す時点で設置されている設備の有無や明細について記した書類です。
こちらも査定の際や媒介契約の際に不動産会社と一緒に作成する書類になります。
書式などは不動産会社によって異なるので、売主が事前に用意する必要はありません。
どのような設備があるのか、把握だけはしておきましょう。
収入印紙
不動産売買契約書に貼付する収入印紙です。
収入印紙代だけ用意しておけば不動産会社が印紙は用意してくれます。
印紙代は売買金額によって異なり、例えば1千万円超5千万円以下であれば2万円です。
本人確認書類
本人確認は契約などを行う都度必要です。
- 媒介契約の際に不動産会社へ提出
- 売買契約の際に不動産会社へ提出
- 所有権移転登記の際に司法書士へ提出
このように、何かあるたびに本人確認は必要です。
運転免許証やマイナンバーカードなどが必要ですので、不動産会社と約束がある時は念の為持参しておきましょう。
仲介手数料
不動産会社の仲介によって不動産を売却する場合には、不動産会社へ仲介手数料を支払わなければなりません。
仲介手数料の上限は取引金額ごとに次のように決まっています。
- 200万円以下の部分:売買価格の5%+消費税
- 200万円超400万円以下の部分:売買価格の4%+消費税
- 400万円超の部分:売買価格の3%+消費税
一般的には売買契約時に半分、不動産の引き渡し時に残りの半分を支払います。
契約時には手数料の半分を用意しておきましょう。
住宅ローンで必要な書類
住宅ローンを借りる際にも様々な書類が必要です。
金融機関によって必要な書類は若干異なりますが、基本的には次のような書類が必要になります。
書類 | 必要なタイミング | 必須 |
本人確認書類 | 事前申込時 | 必須 |
源泉徴収票 | 事前申込時 | 必須 |
健康保険証 | 事前申込時 | 必須 |
住民票 | 本審査時 | 必須 |
建築確認済証・検査済証 | 本審査時 | 必須 |
パンフレットなど | 事前申込時 | あれば |
実印 | 契約時 | 必須 |
銀行印 | 契約時 | 必須 |
印鑑証明書 | 契約時 | 必須 |
収入印紙 | 契約時 | あれば |
それぞれの書類で金融機関がチェックしている内容などについて詳しく見ていきましょう。
本人確認書類
ローンの申し込みには本人確認書類が必要です。
本人確認書類は事前審査申し込みの際に必要ですので、運転免許証やマイナンバーカードなどを用意しておきましょう。
源泉徴収票
源泉徴収票は本審査で必要になります。
会社員の方は源泉徴収票を、個人事業主の方は確定申告書など、収入を確認できる書類を用意しておきましょう。
なお、銀行によっては事前審査から必要な場合があり、事前審査の時から手元に用意しておいた方が正確な年収を申告することができます。
事前審査の段階から源泉徴収票などの年収を確認できる書類を用意しておいた方が無難です。
健康保険証
健康保険証も本審査で必要になります。
健康保険証からは勤続年数や社会保険の有無などの確認を行っています。
こちらも事前審査から用意しておいた方が正確な申告をすることができるので、できれば事前審査の段階から健康保険証も手元に用意しておきましょう。
住民票
住民票は本審査で必要になる書類です。
家族状況を確認するために必要になるので、事前審査の時には必要ありません。
取得するのには300円程度の費用がかかるので、事前審査に通過してから役所で取得すればよいでしょう。
建築確認済証・検査済証
住宅ローンの借り換えを行う場合や中古住宅を購入する場合には、対象になる物件が法律を遵守しているかどうかの確認のために建築確認済証が必要です。
住宅ローンの審査では本審査で物件の詳細な審査を行うので、確認済証は本審査で必要です。
手元にない場合や紛失した場合には、役所で「建築計画概要書」や「建築確認台帳記載事項証明書」を発行することによって「法律を遵守している建物かどうか」を確認することができます。
実印
実印は契約時と登記の手続きの際に必要です。
住宅ローンの契約は実印取引が必須ですので、契約書には実印を押印しなければなりません。
また、所有権移転登記と抵当権設定登記のための書類にも実印の押印が必須ですので、本審査に通過したら実印を用意しましょう。
銀行印
銀行印は契約時に必要です。
住宅ローンの返済用口座を契約書に記載する場合は、その欄に銀行印も押印しなければなりません。
また、司法書士への報酬の支払いを銀行へ依頼する場合にも、銀行へ預ける普通預金払戻請求書に銀行印を押印します。
こちらも契約時以降に必要になるので、本審査に通過したら用意しておきましょう。
印鑑証明書
印鑑証明書が必要なタイミングは、実印を押印するタイミングです。
契約時に銀行と保証会社へ提出し、所有権移転登記と抵当権設定登記の際に司法書士へ提出します。
発行から3ヶ月以内のものしか有効とは認められないので、本審査に通過したら銀行から依頼された枚数の印鑑証明書を市区町村役場の窓口で取得するようにしてください。
収入印紙
ローンの契約書には借入額に応じて定められた収入印紙を貼付しなければなりません。
借入額が大きくなれば印紙代も大きくなります。
例えば、例えば1千万円超5千万円以下であれば2万円です。
収入印紙は借主側で用意することもできますが、銀行から購入することもできるので、収入印紙代に相当するお金だけ用意しておけば問題ありません。
不動産の引き渡し時に必要な書類
不動産を引き渡す際にもいくつか書類は必要です。
書類 | 必要なタイミング | 必須 |
銀行口座 | 売買契約時 | 必須 |
抵当権等抹消書類 | 売買契約時 | 必須 |
住民票 | 売買契約時 | 住所が変わっている場合は必須 |
不動産の鍵 | 引き渡し時 | 必須 |
仲介手数料 | 引き渡し時 | 必須(半額) |
それぞれの書類の目的や具体的にどのようなものを用意すればよいのか、解説していきます。
銀行口座
買い手が売買代金を振り込むための銀行口座を用意する必要があります。
通帳などの口座番号が分かる書類を用意しておきましょう。
不動産の売買の際、不動産会社や買い手に口座番号を伝え、指定した銀行口座へ振り込みを受けます。
抵当権等抹消書類
住宅ローンを借りている不動産を売却する場合には、売却と同時に抵当権の解除も行います。
司法書士へ委任状と住宅ローン完済後に銀行から届く解除証書を渡して、抵当権を解除してもらいましょう。
住民票
不動産の引き渡し時に、登記上の住所と売主の現住所が異なる場合に必要です。
家を売る際にはすでに新しい住居へ引っ越しているケースが多いので、住居が変わっていた場合には新しい住所を証明する住民票を用意しておきましょう。
なお、住民票の有効期限は印鑑証明書と同じく3ヶ月ですので、印鑑証明書と一緒に市区町村役場で取得しておくと便利です。
不動産の鍵
通常、家を売却した後は買主が家の鍵を交換するものですが、一応、不動産の鍵は買主に渡さなければなりません。
合鍵などを作っているのであれば、すべての鍵をまとめて買主もしくは不動産会社に渡しましょう。
仲介手数料
売買契約時に支払った仲介手数料の残り半分は不動産の引き渡し時に支払います。
引き渡し時には、不動産会社と契約した金額を用意しましょう。
なお、通常の不動産売買では仲介手数料は売買代金から控除することはできないので注意してください。
まとめ
不動産の売買には必要書類の数が非常に多くなっています。
全ての書類をあらかじめ用意する必要はありませんし、必要書類の一覧を不動産会社が用意してくれるので必要書類を暗記する必要もありません。
しかし、査定や審査に必要な書類がどこにあるのか事前に把握しておくことによってスムーズに売買手続や査定を終えることができます。
不動産の売却や住宅ローンの審査ではどのような書類が必要で、その書類がどこにあるのか事前に把握して、スムーズに不動産の売買手続を進めるようにしましょう。